症例紹介

傾いた入れ歯。修理ばかりの繰り返し…。86歳、食べる楽しみを取り戻すために

【case21】Sさん 86歳男性の症例
傾いた入れ歯。修理ばかりの繰り返し…。86歳、食べる楽しみを取り戻すために
治療後のSさん
治療前→治療後

入れ歯を作り替えたい。金属床の入れ歯にして欲しい。どこに行っても作ってくれない。しっかりと気持ち良く食べたい。
ということでSさんは永井歯科に来院されました。
この年になると楽しみは食べることなので、それを実現できる歯を入れたいとのことです。

今の入れ歯は3年前に作った入れ歯だそうですが、3年通ったけれども痛くてうまく咬めずにいるそうでした。もう一度入れ歯を自費で作り直す提案をもらったそうですが、考え直して別の歯科に移られたそうです。他の歯科で作り替えを希望しても、修理だけで、結局新しい入れ歯を作ってくれる歯科はなかったそうです。現在の義歯は痛いし、しっかりかみ砕くのには不十分とのことでした。

私は、こういった皆さんの食べる喜びを叶えるために、様々な治療法を今も学び続けています。

 初診時。 上下のアゴも、前の入れ歯も 大きく傾いています。

「イーー」と口を開けて入れ歯を見せてもらうと、お顔に対して入れ歯が傾いて入っていました。
実際にお口の中を観察しますと、右下だけにしっかりした歯が3本だけ残っていました。
歯がない部分はアゴの骨が著しく吸収し、アゴの形が斜めに歪んでおり、入れ歯も斜めに歪み、その影響でお顔も少し斜めに歪んでいるようにお見受けしました。

初診時。入れ歯が傾いていました。
入れ歯を外したところ
初診時のレントゲン。対角線上の赤で囲った部分の骨が著しく吸収しています

残った歯同士が上下で噛み合うことなくすれ違う咬み合わせは、驚くほど大きな骨の吸収を伴うことがあります。このような重度のすれ違い咬合は入れ歯づくりが極めて困難になります。

またガンで胃の一部がないので、食事は小分けに、回数を増やしてしっかり噛んで食べないといけないので、Sさんにとって入れ歯は人一倍大切です。

前の入れ歯 左は表 右は裏側

この場合Sさんの夢の実現のために私が提案できる選択肢は、ドイツ式の入れ歯か、数本のインプラントを応用した入れ歯かの2つになります。
こういったケースに自由診療で留め金式の入れ歯をお作りしてもなかなか満足してもらえず直ぐに合わなくなりました。健康保険の入れ歯をお作りして、痛くなく入れ歯が安定した覚えも一度もありません。保険の入れ歯と同じ技工所に出して、材料と仕上げを金属床に変えても何も良くなりません。技工士選び、技工士と知識と価値観の共有、技工士と緻密な情報交換、良好な意見交換ができる関係性が必要です。
時間もかかりますし、これまで学習してきた概念を全て捨てて一から考えなおす必要もありました。

Sさんの残っている3本の歯はとても丈夫です。とても元気な方ですが86歳と高齢なため手術は避けて、上はドイツ式の総義歯、下は丈夫な歯3本を活用したドイツ式のテレスコープ義歯お作りすることにしました。

入れ歯づくりのポイントです
・Sさんにとって正しい咬み合わせを見極めること
・型どりは必要なものはきちんと全てとる
・入れ歯とは、歯と歯ぐきのボリュームを復元するので、以前の小さな入れ歯よりかなりの大きさになりうる
・上記3つをまとめて実現するために上下アゴ同時印象法で対応しています
・丈夫な人生最後の入れ歯をお作りするので、ベストの材質とベストの技工を行う
・わざわざ金属床でなくても強度も装着感も納得していただけるので金属床は使いませんでした。

当院では非常に精密なドイツの咬合器を使用し、考え、入れ歯を製作しています
ドイツの咬合器でも、上下のアゴが斜めに歪んでいることが分かります。一般の方が見ても一目で難症例と分かるかもしれません
上下アゴ同時印象法での歯かたを、ドイツの咬合器に装着し製作してゆくところ
お口のボリュームをそっくりそのまま型にし、模型に移します
精密に仕上げられた金で出来た内冠
金色の内冠は入れ歯を支えるのに重要な役割を果たしています
完成した入れ歯。ピンクの部分は硬くてとても強度があり、精密で長持ちします。
完成した入れ歯。右側は入れ歯の裏側になります。人工歯はヨーロッパの人工歯厳選して使用。すり減りが極めて少なく、10年20年と長くお使いいただけます。

治療の流れは
仮歯に替えるのに1回、型どり2回、仮合わせ1回、完成1回 の5回で治療は終了し、調整は3回で入れ歯は安定しました。

現在食事は、痛みもなく多種多様なものを楽しんで召し上がれるようになりました。
流石に若い頃の天然の歯ほどは食べられませんが…。それでも術前よりはスコアはアップしています。
健康は口からと言われますが、Sさんは食べられる食品数が飛躍的にアップし、お顔立ちがすごく若々しくなりました。食事って大事ですね。

右が治療後の入れ歯。表情も若々しく自然。傾きも消えました。
口元だけでなく、表情全体が生き生きとされています。

これまでの入れ歯は入れた時がよくてもどんどん痛みがでて、咬みにくくなっていったそうです。今回の入れ歯は、初めは痛かったけれど、どんどん慣れてきたようです。時間と共に、もっと慣れるであろうと実感されているようです。
グミを30回噛んで咀嚼力を判定するグミ検査は、治療前が5でしたが治療後は7まで噛み砕けるようになりました。
細かく噛み砕けるので1/4しかない胃への負担もかなり減っていることでしょう。

咀嚼力測定ゼリーでは、5から7までアップ 胃の負担が減ります

入れ歯の不満足度を示すOHIPスコアでは、治療前合計23ポイント→治療後合計6ポイントにまで減少しました。
人前で恥ずかしい思いをしたことが時々あるそうです。右頰に食べかすが残るからです。食事中お茶ですすいだり、家だと指でかき出すこともあるそうです。ここは一気に削ると失われてしまう機能も多いので、点検の折に時間をかけて対応していきたいと考えています。

左が山本式咀嚼判定:治療後食べれるものがレベル4→レベル6へと増えました。  右がOHIPスコア:治療後は合計が23→6になり良くなりました。

山本式咀嚼判定表では治療前のレベルは4まででしたが、治療後はレベル6まで食べられるように変わりました。

左が当院の入れ歯 右が前の入れ歯。
左が当院の入れ歯、右が前の入れ歯。大きいのでしっかり噛んでも痛くなく、大きいのに異物感が少ないのが特徴です。

ご友人たちに入れ歯のアドバイスを求められたら、「入れ歯はある程度費用は出さないと良いものはできない。保険ではまず厳しい」と、これまでの長い入れ歯生活を通して、教えるようにされているそうです。

また、皆さん口を揃えておっしゃいますが、歯医者は年配すぎても、若すぎても良くないと感じているそうです。私は必ずしもそうではないですと言いたいところです。自分が年配になっても、今のように皆さんに求められるなら、入れ歯やインプラントを通じて皆さんのお役に立ちたいと思います。

全ては患者さんの笑顔のために 永井康照

治療後です

■治療期間
3ヶ月

■費用

詳細は、総入れ歯、ドイツ式入れ歯のページをご覧ください。

■リスクと副作用
残った歯に被せる際、ごくまれに歯に痛みが出る場合があります。その場合神経処置などを行い適切に対応致します。

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